物 語
感 想
初舞台にして一人舞台、しかも、カナダ人演出家と組み、カナダの演劇フェスティバル
に参加、何もかも型破りな中谷美紀。
今まで舞台やったことがないというのが意外だったが、初舞台がいきなり2時間弱出ず
っぱりの一人芝居というのもすごい。
よほど、自分に自信がなきゃできるわけがない。
なのに彼女はまったく気負うところもなく、さらっと演じてしまうのだ。
深い闇の情念を。
猟銃自殺した男をめぐる三人の女。
娘。
妻。
愛人。
立場が違えば抱く思いも変わる。
思慕と恨みと愛と情。
延々と移り変わる姿はやがて、女という一つの姿に集約されていく。
極限まで落とした照明、水やろうそくを使った幻想的なセット、なによりむき出しの生
身の女の肉体を惜しげもなく晒す。
息詰まるというのは、まさにこのことだと思い知らされる。
ただ観ているだけなのに、なぜこうも息苦しいのだろう。
女優の途切れない集中力は劇場を支配し、観客に逃げることを許さない。
圧倒的な支配者に翻弄される我々は、追い詰められ猟銃にすがった男のようだ。