新春浅草歌舞伎第二部
松竹

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物 語

◆壺坂霊験記◆
大和国壺阪寺近く、座頭の沢市（片岡愛之助）は幼馴染みの恋女房お里（中村七之助）とともにささやかに暮らしている。
ある時、沢市が泣きながら三味線を弾いているのをお里は訝しむ。
毎晩のように家を抜け出すお里の浮気を疑って、沢市は涙を流していたのだが、実はお里は三年もの間、沢市の眼病平癒に願掛けで壺阪寺に世参りしていたのだ。
最愛の夫に嫌疑をかけられたお里は悲しみ、沢市はそんな自分を恥じる。
では、今晩は一緒にお参りに出かけようと、沢市はお里を連れ出す。
道々、壺阪寺のご利益を話してきかせるお里だが、沢市はどこか思い詰めた様子。
沢市はお里に断食しながらお籠りをすると言い出し、お里は準備のため、一度家へと戻った。
だが、沢市はお里に迷惑をかけることが忍びなく、最初から死ぬ覚悟だったのだ。
お里がいなくなったのを確認して、沢市は崖から身を投げる。
胸騒ぎを覚えたお里が急いで戻ってくるが、沢市は谷底で冷たくなっていた。 嘆き悲しんだお里は、同じく崖から身を投げる。
そこに観世音菩薩が現れ、お里の信仰と貞節に免じ、二人を生き返らせる。
しかも、沢市の目も見えるようになっていた！
二人はより信仰を深め、家路につくのであった。

◆黒手組曲輪達引◆
新吉原の仲之町。
鳥居新左衛門（片岡愛之助）の門弟らが、白酒売り新兵衛（市川寿猿）をなぶっている。
そこに現れたのが、花川戸助六（市川亀治郎）。
血気盛んで侠気のある助六は、門弟を撃退し、新兵衛を助ける。
実は、新兵衛は助六と恋仲の三浦屋の花魁揚巻（中村七之助）の父親であり、助六の父親が闇討ちされた場に居合わせたことがわかる。
新兵衛の証言から、父親を闇討ちし名刀北辰丸を奪ったのは、三十路半ばの浪人だとわかる。
新兵衛と入れ替わりにやってきたのは、父の旧友紀伊国屋文左衛門（片岡愛之助）。
助六の短気を心配する文左衛門は、父親代わりとして助六の脇差しを封印し、簡単に刀を抜かないよう注意する。 三浦屋にメンツを潰された新左衛門がやってくる。
新左衛門は散々、助六を挑発するが文左衛門に戒められた助六はひたすら我慢。
その時ふと新左衛門の脇差しを見ると、ななななななんとそれは！
北辰丸！
なんとなれば、新左衛門こそ父の敵だったのだ。
そこに揚巻が現れ、自分に振られた意趣返しに助六に嫌がらせしているのだろうと罵る。
悔しがる新左衛門は、助六を打ち据えて逃げるようにして去る。
父の敵を見つけた助六は、文左衛門から封印を解く許しを得、新左衛門を待ち伏せる。
首尾よく敵を討ち、北辰丸も取り返したが、人々が騒ぎ出してしまう。
行き場を失った助六は天水桶に身を隠す。
だが、やってきた捕手たちに助六は見つかってしまう。
が、助六を救ったのは、粋な啖呵を切った揚巻だった。
揚巻のおかげで窮地を脱した助六は、いつか夫婦になることを誓って、その場を去っていく。

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感 想

正月恒例浅草歌舞伎。今年は勘九郎が卒業してしまったのが残念だけど、亀治郎さんが頑張ってくれているので、安心して観ていられるというか、フレッシュがいかにも新春らしいなあと思う。

世話物の名作と言われる「壺坂霊験記」　夫婦の情愛を描いた作品で、行き過ぎた情愛が悲劇を生み、しかし、それが仏に届き大団円という、ある意味単純な筋立てなので、役者の演技が問われるのだと思う。
七之助のお里は可憐で一途、愛之助の新左衛門は繊細で生真面目。情愛の細やかさが良かったなあ。

「黒手組曲輪達引」　助六から着想を得た作品らしいですが、つーか、まんま助六やん！　と思いましが、ちょっと人物配置が違うのだなあ。それだけで、これは別物ですと言い張れるのだから、やはり、歌舞伎は懐が深い。
助六役者の三役早変わりが見どころらしいですが、亀治郎さん頑張ってた。22年ぶりという本水を使った大詰も迫力あって、良かったなあ。
七之助の揚巻はう……美しい！　いつか、本家助六でも、揚巻が観られたらいいなあ。

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