物 語 感 想
干支一回りして12年ぶりに松尾ビリーバーで上演された作品が還ってくるのには、なにか意味があるのだろうか。
意味などない、きっと。
ただ、森羅万象の巡り合いがあったのだ。
どういう運命のめぐりあわせなのか知らないが、本多劇場で見てから12年もたっていたというのが、一番恐ろしい事実。
この12年の間、松尾さんを取り巻く状況も、大人計画の立ち位置も変わってしまったけれど、劇世界は恐ろしいほど変わらない。
なぜ、米良なんだ!
12年もたっているのに米良。
すごいよ松尾さん。
脱帽だよ。
この作品はフランスでも上演された。
文化の違うフランスが横移動だとしたら、12年後である2013年は縦移動である。
米良をオンタイムで経験していないという点において、同じである。
つまり松尾さんは、米良ネタを残すことにより、作品の普遍性を表現したのである。
きっと、たぶん、考えすぎじゃなきゃ。
実際のところ、対人恐怖症の女の子も、人嫌いが高じてマシーンになりたがる女も、弟を監禁する兄も、町内を盗聴する男も、12年前も今も12年後も存在するのだろう。
ここに出てくるのは、何の変哲もない普通の人たちなのだ。
ただ、目につかないだけで。
幸福な家庭が崩壊するのも、不幸な家庭が崩壊するのも、壊れてしまうという点では同じ。
どちからがより壊れているかなんて、そんなのは関係がない。
今壊れているものは、過去も壊れているし未来も壊れている。
マシーン日記とは、壊れ続ける普遍性の物語なのだ。