瞼の母

準備中……

もうとにかくチケット取るのが大変で、スマップ人気をまざまざと思い知らされてしまったのだけど、なんとか取れた奇跡だ。
渡世人が、自分を捨てた母を探し当てて会いに行くが、過去を捨てた母に拒絶され、そんなんだったら、空想の中の母のほうがよかった、みたいな、こう書くと身もふたもない物語だけど、渡辺えりさんの人情にぐっと寄り添った演出が、見るものの涙を誘う。
たぶん、あえてだと思うけど、自然体ではない、芝居じみた動きが多く、常にこれが芝居であることを常に意識させられた。
感情移入をやんわりと拒否されているというか、完全に物語に同化して楽しむことができない。
役者は演技してますよという顔で演技しているし、役を演じている役者と演じている人物を同時に観るという、なんとかも不思議な乖離感を味わった。
普段あまりしない観方なので、少し混乱してしまったが、これはこれで面白い。
全体的に、商業演劇のパロディというか、微妙な誇張があちこちに見られる演出で、その中で役はより抽象化されシンボリックに変化していく。
複雑な心の動きをカットし、単純な感情だけで動きを作る。
単純とは純粋無垢であり、ただそれだけを追う幼子の動きだ。
実母にすら母の面影を見ることができなかった　は、この先、どこへと行くのだろう。
背中の哀愁にそう思う。