sisters

準備中……

吉田鋼太郎祭再び。
「悪魔の唄」は自分の中では祭りだったので、今回も期待していたけれど、きたよ、き たよーな感じのけっこうソコソコの祭りだった。
愛は束縛かもしれないが、束縛は間違っても愛じゃない。
愛しいるから相手を縛りたくなるが、縛りたくなるから愛しているとはならない。
錯覚だ。
だが、錯覚を利用する人間はいる。
利用されるのは、たいていもっと弱い人間だ。
古いホテルに滞在する絵本作家親子。
ホテルにやってくるシェフと妻。
娘を見た瞬間、妻のトラウマが傷口を開く。
錯覚を愛だと認識するのは、自分が壊れるのを防ぐためだろうか。
愛しているからと無理に納得させるのは、自分が惨めにならないためだろうか。
その結果、他の誰かを死に追いやって、そのことで更に自分が傷つくことになっても。
トラウマを目に見えるようにしたという意味で、この演出は画期的。
ホテルの壁から水が吹き出し、床に溜まっていくのだ。
トラウマの傷口が開いたその瞬間を、我々は目撃することができる。
もっとも一番最初は気づかず、いきなり壁から水が噴き出した時は、欠陥ホテルか？な んて思ってしまった。
あれは、トラウマの象徴だ。
水はどんどん溜まっていき、人物たちは水を吸ってどんどん濡れていく。
それはトラウマにまみれた、傷ついた魂なのか。
トラウマに飲み込まれ絵本作家親子は心中し、また一人残された妻は呼びかける夫に暗 い目を向ける。
実は珍しく2回観に行ったのだけど、最後のセリフの演出が少し変わっていた。
初日では、ウツロに響いた声が、半ば過ぎでは意思を感じさせるものになっていたのだ 。
トラウマの海にとらわれた魂が、あがきながらも進もうとしている。
そんな印象を受ける2回目のほうが、自分は好きだ。