扶桑社
07/10/10
1200円＋税
ハケン生活13年！
派遣社員として長年生き抜いてきた著者が教える、派遣の極意。
正社員と敵対することなく、職場の人間関係に気を配り、スキルアップを目指しながら、与えられた仕事はきっちりとこなす。
著者の経験談や派遣先会社でのエピソードなど、軽く笑えるものも多くスラスラと読めるのが、上手いなあ。
以外にお金のかかる履歴書用写真の経費節約の裏技や、派遣担当者にアピールできる職歴表の書き方など、派遣生活の裏から表からをしっかりとレクチェーしてくれる本。
非正社員が3割を越える昨今。
後学のために読んでおくのが良いかも。
ミリオン出版
07/04/26
1800円＋税
実話ナックルズに連載されていた廃墟写真&記事を一冊にまとめたもの。
その第二弾。
ひとが廃墟に惹かれるのは、今はもうない、者たちの痕跡をそこに見るからなのだろうか。
止まった時間を求めているからだろうか。
バブルに踊った成れの果てから、噴火に焼かれて廃墟になった幼稚園跡まで。
多種多様な廃墟物件を取り揃えた本作、ますます写真は美しく、きっちり取材した記事は読み応えあり、その場に行けなくても、彼らの夢の中で一緒に旅しているような感覚になれる。
人がいなくなった建物に君臨するのは植物たちで、その生命力に強さは、真の地球の主人は誰なのか語っているようでもある。
講談社新書
06/01/20
838円＋税
少年や精神障害者による凶悪犯罪は減っている。
というのが、ここ数年の警察犯罪白書による統計に準拠とした事実である。
が、印象としては、凶悪犯罪は決して減っているようには思えない。
戦前でも、未成年者による猟奇的犯罪はあったが、今ほど過熱に報道はされていなかっただろう。
著者がいう、ホラーハウス社会とは、お化け屋敷のように、いつどこから、お化けが出てくるかわからない、ドキドキしながら、その恐怖をも快楽にしてしまう社会のことだ。
犯罪を一種のエンターテインメントとして消化している社会。
そこに、印象と統計のかけ離れた実態の一因がありそうだ。
著者は、少年法・精神保健福祉法が改正されるのは当然であると言う。
だがそれは、被害者保護のためではない。
かつての少年法・精神保健福祉法は、徹底的な隔離政策をとっていたからだ。
つまり、未成年者も精神障害者も一般人よりも、低い位置に貶められていたということだ。
未成年者に責任がないということは、普通の人間として認めていないということである。
著者は、一人のちゃんとした人間として責任をとらせるよう改正を求める。
現在の社会は、未成年者も精神障害者をタブー化し、一種怪物のような扱い方をしている。
一方的にホラーハウスの化物にされてしまった犯罪者たち。
それを見物している一般人。
この社会はいったいどこへ向かうのだろうか……
築地書館
05/08/10
1700円＋税
サブタイトルは、「マニアの熱意がつくる新しいネットビジネス」
まさに、その通りの仕事をしている会社の奮闘記。
本というのは永遠ではない。
店頭からはあっという間に消えていくし、出版社の在庫だって新刊に押されてどんどん消えていく。
絶版という形で、版ごとなくなることも多い。
あの本が読みたい！と思っても、入手できないことも多々ある。
潜在的需要を掘り起こし、ある程度の人数が見込めるのならば、絶版本を著者と出版社に交渉して、再出版してしまいましょうという、出版ニッチビジネス。
それを本業としているのが、大手配本メーカートーハンの子会社として設立された、復刊ドットコムなのだ。
この会社の面白いところは、ネットを通じて直接ユーザーに熱意を問うところ。
復刊して欲しい本を投票してもらい、ある程度の人数が集まり、利益が出ると判断したら、復刊ができるよう行動を開始するのだ。
社長である著者は何度も言う。
これはビジネスなのだと。
熱意だけでは会社は動かない。
そこに利益が出て初めて、会社は復刊について動き出すのだ。
マニアたちは復刊を求め、自主的に仲間を集め初めて、会社はマニアの熱意に応えるため奔走する。
その結果、復刊されたのはホモパロディ同人誌から物理学の名著と幅広い。
不景気にあえぐ出版界のとってのニッチ産業。
世の中、目のつけどころと人の動かし方だという、ビジネス書としても読めるかも。
封印作品の闇〜キャンディ・キャンディからオバQまで
安藤健二
だいわ文庫
07/09/15
800円＋税
2006年に出た単行本に、書き下ろしとして一章を加筆した文庫版。
封印作品とは、世間が知らないうちにひっそりと絶版にされてしまった作品のこと。
著者は、封印作品に惹かれ、次々と封印作品たちを光あるところへと送り出している。
本書に収録されているのは、「キャンディ・キャンディ」「サンダーマン」「ジャングル黒べえ」「オバケのQ太郎」
特撮作品「サンダーマン」以外は、超有名漫画であり、一斉を風靡した当時の子供だったら誰でも知っている作品。
それが、いつのまにか封印作品として、闇に葬り去れていたのだ。
著者は、地道な取材でこれからの作品がなぜ、封印されてしまったのかの謎に迫る。
「キャンディ・キャンディ」に関しては、最高裁までもつれこんだ著作権裁判が有名なので、原作者と漫画家が争っていることは知っていたが、その他の作品については、封印されていることすら知らなかった。
「サンダーマン」は著作権ビジネスの生贄となり封印作品となり、「ジャングル黒べえ」は過剰な業界の自主規制により封印作品となった。
そして、「オバケのQ太郎」
文庫化に際して、単行本では書けなかった真実を書き下ろし一章として構成。
そこに浮かび上がった真実もまた、著作権にまつわる争いに端を発しているのだ。
二人で一人の漫画家として活躍した藤子不二雄。
彼らの友情は終生続いたそうだが、彼らの周りの人間たちにはまた、別の思惑があったようだ。
巨大なビジネスが派生するコンテンツ産業の闇。
我々が知らないところでひっそりと、今日も誰かの作品が闇に葬りされているのかもしれない。
メディアファクトリー
06/12/04
1200円＋税
第1章 『十角館の殺人』綾辻行人
第2章 『8の殺人』我孫子武丸
第3章 『長い家の殺人』歌野晶午
第4章 『玄い女神』篠田真由美
第5章 『十字屋敷のピエロ』東野圭吾
第6章 『笑わない数学者』森博嗣
第7章 『誰彼』法月綸太郎
第8章 『本陣殺人事件』横溝正史
第9章 『三角館の恐怖』江戸川乱歩
第10章『斜め屋敷の犯罪』島田荘司
ミステリ好きならば、一度は思ったことはないだろうか。
この館、この家、この塔、この屋敷……本当はどんな形をして
いるのだろうかと。
奇天烈な館で殺人事件がおこり、間取りの説明が詳細に書かれ
ていたら、たいていの人はなんとなく納得した気になるもので
あるが、著者はそこでこう思った。
実際に図面におこしてみよう。
大のミステリ好きの一級建築士の思いつきで生まれた本。
取り上げられるのは、どれも有名作家の名作ばかり。
ミステリファンなら、どれか一冊ぐらいは読んだことがあるとは思う。密室嫌いで読んだことがない人でも、興味深く読めるのが本書の素敵なところ。
正十角形の館だったり、巨大な8時の屋敷だったり、51
メートルの廊下がある家だったり、82メートルの塔だったり、
オリオン座をイメージした丸い三連棟だったり、ナナメに傾い
ていたりするのも、その中での密室殺人を演出するもの。
トリックのために作家がひねり出した館たちは、詳細に分
析す
ると、作中のトリックよりもアリエナイ存在と化す。
まさに一番のミステリー。
熱烈ミステリファンの著者は、作者と作品をリスペクトし、決
してネタバレになるようなことはしない。
作品未読の方も、安心してご覧下さい。
詳細な図面で描かれた犯行現場は、文中で読んだ時とはまた
違った魅力を発揮し出すのだ。
新潮社新書
05/10/20
680円＋税
人間は外見じゃないよ、と教えられてきた人にはものすごい違和感あるタイトルかもしれない。
が、この「見た目」というのは、ルックスの良さのことではなく、非言語コミュニケーションのテクニックのことだったのである。
ノンバーバルコミュニケーション。
本書で初めてその存在を知った、不勉強な自分であるが、言葉を介在しないコミュニケーションのあり方。
つまり、顔つき、仕草、目くばせ、匂い、色、温度、距離感など、「目は口ほどにモノを言う」というアレである。
人のコミュニケーションのおよそ9割は、こうした言葉に頼らない「見た目」から成り立っている。
著者は、劇団演出の傍らに漫画原作もこなすという人なので、本書もコミュニケーション論としての学術的なものではない。ある意味、記号化された舞台の演技
や、漫画のキャラクタの表情から得た、コミュニケーションテクニックを解説し、それを日常に生かそう！といったスタンスの本であると思った。
コミュニケーション不全症気味だと思う人は、一度読んでみたら良いかもしれない。
記号的テクニックを会得したら、自分なりの表現方法を目指すのだ。
真に魅力的な人物になるよう、かんばって下さい。
中公新書
06/10/10
720円＋税
前著で、あれだけ当の腐女子たちに叩かれたというのに、次
回作は更なる発展形で来るのが、すごい。
女オタクの別名である腐女子とは、格差社会における女性の生きるための技術である。
という結論に達するこの本。
30代という著者と、その友達の年代の腐女子たちを取り上げ、男からの視線を無視し、女性誌が提唱する理想の女性像を無視し、自分の好きな自分の世界に閉
じこもる腐女子たちの姿を赤裸々に描いている。
性差別、雇用格差、どうにもならない閉塞感からの脱出は、自分の趣味＝ＢＬの世界に閉じこもること。
本人たちがそれで楽しいなら、それでもいいかと思うのだけど、問題なのは、腐女子というカテゴリにはいるのは、著者が言う「負け組の新しい形」だけでない
ということだ。
当然のことだが、腐女子という名がつくよりずっと前から、それこそ、男オタクが誕生したのと同時に女オタクは誕生しているし、年齢も10代から50代近く
まではいるはずだ。
結婚していても腐女子の趣味を楽しんでいる人もいるし、社会的ステータスのある職業についている人もいる。
格差問題を論じているわりには、腐女子自らの格差について触れていないのが、なんだかすごくモヤモヤする。