ま行-4

日経BP社
05/08/14
1600円＋税

サブタイトルは、米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか。
米国でマンガ出版社ビズを立ち上げ、日本の漫画を売り込んだ著者の半生記。
今、世界中で日本の漫画が売れているらしいが、各国にきっと著者のような熱い人がいたのだと思われる。
アメリカンコミックとは、かなりの毛色の違う日本の漫画。
最初はマニアックなものを少しづつ、やがてポケモンブームがくると、それなりのメジャー作品をどんどん売り込んでいく。
小学館と業務提携し、今では市場規模は一億ドル！
ビジネスチャンスをモノにした著者による、オタク的成功譚。

東洋新聞経済社
06/03/14
1500円＋税

「負け犬」
アラフォーで独身子なしをそう呼ぶ。
なんと恐ろしいことに「負け犬」は、勝ち組に比べて平均寿命が短いのだそうだ。
孤独からくる鬱病で自殺する確率も高いのだそうだ。
本当かなあとも思うが、統計上そうなっているそうなので、そうなんだろう。
著者が解くのは、一人でも楽しく生きる生き方。
「負け犬」と卑下することなく、気にしない精神で長生きしたいものである。

草思社
07/07/03
1500円＋税

「初恋の人探します社」
大阪に実在する探偵社。
人探しが探偵の仕事の一つではあるけれど、この会社は一味違う。
誤解したまま別れてしまった友達、恋人に言えなかった思い、行方知れずの恩師、あの時言われた言葉の意味。
もう一度会えなくても、せめて元気でいてくれるのか知りたい。
そんな思いを抱えて訪ねてきた客に寄り添い、会いたい人を探し出す。
探し出した後どうするかは、依頼人次第。
ノンフィクションとは思えないほどのドラマティックな展開もあり、まさに事実は小説より奇なり。
人の思いの深さに感じいる。

新潮社
08/12/20
1300円＋税

ジュエル！
それは美しく輝く宝石のごとく讃えられる、新鮮極上のホルモンのこと。
ホルモンヌなる言葉を生み出した、20代女性である著者による、ぶらりホルモン食べ歩き文学。
一人でふらりと、時に友と、そして編集者と一緒に訪れた名店は東京を中心に44点。
オヤジ系の立ち飲み屋から、赤坂の高級焼肉店まで、多種多彩な店選び。
絶対に一つは、お気に入りの店が見つかるに違いない。
読んでいるだけで、匂ってきそうな臨場感。
それは、著者がとにかくホルモンを愛しているからに他ならない。
ホルモン食べ歩きに付き合う友人たちも、仕事を辞めて田舎に帰った人あり、大病を患い休職している人あり。
人生、浮いた話ばかりではない、まあ、一緒に飲もうよとチンと乾杯したくなる一冊。
著者オススメの店は、すべて新鮮なホルモンを提供しているが、新鮮なホルモンを提供するために、店がどんな苦労をしているのか。
本書とあわせて、内澤旬子著「世界屠畜紀行」をオススメしたい。

高文社
01/09/20
1500円＋税

差別よりも恐ろしいのは偏見だ。
差別意識はないと思っている人でさえ、無意識のうちに偏見を持っているのではないか。
この無意識というのがやっかいで、今までの人生の中で見てきた聞いてきたことが、いつのまにか常識として自分の中に根づいてしまうのだ。
普通とはいったいなんだろうか。
多数派のことだろう。
当たり前というのは数の論理で、少数派はいつも偏見の矢面に立たされる。
本書は、「ユニークフェイス」という自助グループに所属している当事者、家族16人が語った体験談。
ユニークフェイスというのは、先天的後天的に病気や怪我で顔が変形したり、アザや傷跡があったりする人たちの団体である。
顔という隠しようのない、一番目立つ部分が他人と違うために謂れ無き偏見に翻弄されてきた人たち。
顔にアザがあるために就職面接でバカにされ落された人や、子供の顔のアザは親のせいだと言い放たれた人、学校ではいじめの対象となり、多額の治療費をかけてもなかなか「普通」にはならない苛立ち…… 読んでいてなんとも胸がつまるのは、偏見を持つ人間の想像力のなさだ。
彼らは、自分が同じ立場に立つことは絶対にないと信じているのだろう。
じゃなかったら、こんなにあっけらかんと人を傷つけるはずがない。
この団体には後天的に傷を負った人たちもいる。
相手の立場になって考えなくてもいい、自分の未来の可能性を想像すれば、どんな世界になって欲しいかわかるだろう。
人生良いことばかりではなく、悪いことも平等に訪れるのだ。

原書房
05/11/24
2400円＋税

アンチエイジング、電車内化粧、メトロセクシャル、美容整形……など、「見た目」をキーワードにして語った対談集。
面白いのは、実際に同じ席での対談ではなく、一人がテーマに添って語ったものに対して、別の角度から語っていくという趣向。
つまり、普通の意味での対談ではない。
後者は前者の意見を踏まえて充分に時間をかけて検討できるので、普通の対談よりもじっくりとした結論を導き出せるのかもしれない。
外見が重要視される時代。
金と時間さえかければ、年に関係ない美を手に入れられる。
でも、それは外見に自分が隷属しているということにはならないのか？
顔にアザを持つジャーナリストの石井氏と、化粧文化研究者の石田氏が、お互いの立場と目線で、「見た目依存社会」の問題点を徹底的に検証する。
ぶ厚く高い本だが、このテーマに興味のある人は一読をオススメする。

ワニマガジン社
06/06/25
1600円＋税

【登場人物】杉浦幸　矢部美穂　いとうまい子　細川ふみえ　大沢逸美安原麗子　吉井怜　生稲晃子　新田恵利　岩井小百合　伊藤つかさ　中村由真　大西結花　我妻佳代　胡桃沢ひろこ宍戸留美　嘉門洋子　藤岡麻美　八木小織　緒方かな子花島優子　杉田かおる

タイトル通り、元・アイドル。
80年代に活躍したアイドルたちへのインタビュー集である。著者の吉田豪といえば、ハンパないアイドル知識で有名なライター。
インタビューはまず、吉田豪の「あの事件の真相はどうだったのか？」という問いかけから始まる。
80年代と言えばまだ、アイドルが人間扱いされなかった時代。アイドルは身近な存在ではなく、手の届かない存在であった時代。その輝くような時代の裏には、彼女たちの壮絶な生活が横たわっているのである。
何人かはテレビ等で自分のアイドル時代の悲惨さを暴露しているので、おおかた、そんな内容だと思って間違いない。
しかし、活字として語られるとまた、あっけらかんとした写真との落差がまたすごく、行間から痛みすら感じる。
30～40代になった彼女たち。
そんな過酷な時代を経てもなお、彼女たちの大半は今でも芸能界にしぶとく棲息している。そう、しぶとく。
大変な時代を乗り越えたからこそ輝ける、いぶし銀の姿がちょっと眩しいかも。

講談社
05/03/31
1600円＋税

オタク産業を語る代表的キーワードとなった感がある「萌え」
イメージ的には最盛期を過ぎた感じがするが、本当のオタクというのは、対外的な盛上がりにはまったく左右されない存在のこと。
本書は「萌え」を知るために「萌える行為」のもっとも先鋭的な現象を取り上げ、論評した本。
「萌え」の中心的現象とは、キャラクター。
実際には存在しない、人の心が生み出した理想型のキャラクター。空想の産物であるから故、いくらでも理想化ができ、そこになにがしかの気持ちを投影することができる。
キャラクターの素晴らしいところは、共有できるにも関わらず、非常に個人的に扱えることだ。
つまり、同じ趣味の人たちと盛り上がりつつも、自分だけのこだわりを持つことも可能なのだ。
本書は「萌え現象」をカテゴリ別に分類して、その実態をルポしている。
「メイドカフェ」「抱き枕」「等身大フィギア」「アイドル」「美少女ゲーム」「声優」
言葉を並べただけでも、あー（納得）と唸ってしまうオタクカテゴリである。
カテゴリ別の歴史も詳細に語られているので、系統だてて萌えを理解したいと思う人には、手助けになるかもしれない。
自分にオタク的要素があると思う人には、面白く読める本。

リトル・モア
03/04/06
950円＋税

世の中には、間取りマニアという存在がいるらしい。
マニアまで行かないが、新聞広告等にマンション、アパート一戸建ての間取りが載っていると、見ずにはいられない人も一定量は存在するに違いない。
かく言う自分もそうだが。
本書の著者は、間取り好きが高じて間取りを集め始め、こうして一冊の本にまでまとめてしまった。ここに登場するのは、憧れの的になる素敵な間取りではない。
どこをどうしたら、こんな間取りになるのだ。この設計者はどういう考えで、こういう間取りを設計したのか。
こんな変な家を本気で工務店は建てたのか。果たして本当に、こんな変な間取りの家がこの世に存在するのか。
という疑問が頭の中を渦巻くぐらい、変で妙でアリエナイ間取りが満載。
本の構成は実にシンプルで、1ページにつき一つの間取りが掲載されているだけ。その間取りに、著者の一言つっこみがはいり、家賃が表示される。
賃貸だったのか！　つーか、こんな部屋、借りる人がいるのかよ！　という驚きとともに、もう一度、間取りを見返すと、そのあまりにも深く底の見えない設計意図の頭がくらくらとしてくるのである。
部屋の中央に水回りを集めた部屋、8畳ワンルームなのに50畳のルーフバルコニーがついている部屋、壁一面観音開きの収納になっている部屋、部屋の真ん中に意味のない壁が突き出ている部屋……
平面的な間取り図だけしかないのが、更に想像力をかきたてる。実際、この家を見てみたいという衝動が押さえられなくなるほどに。
できたら、写真集でも作って欲しいものだ。