だ行-1

角川ホラー文庫
00/12/10
553円＋税

ダイニングのリフォームを手がけている、キャリアウーマンの主人公は、最近、自分が信用できない。
リフォームを依頼された客のマンションの踊り場で、倒れてから、ところどころ記憶が抜け落ちるようになったのだ。
そもそも、踊り場で倒れていたのだって、その理由が記憶にない。
そんなおり、短大時代の同窓生から、仲間うちだけの同窓会
に誘われる。
気分を変えようと参加した主人公だったが、そこで、自分だけが覚えていない「親友」の存在を示唆される。
ただでさえ、自分の記憶に自信のない主人公は、その幻の「親友」の存在を、確かめるために奔走する。
実はその「親友」は、主人公を心よく思っていなかった、同
窓生たちが作りあげた架空の存在だった。
だが、同窓会の後、架空のはずの「親友」が彼女たちの前に現われ始める……。
ホラー風味のミステリ。
「親友」の正体が、自分的には納得いかなかったりするのだが。うーん。
もう少し、いろんな意味で練られていたら、おもしろくなったのに。
残念だ。

講談社
97/07/05
740円＋税

ビンボー私立探偵であるところの俺は、ある日、行方不明の大学教授とカンガルーの捜索依頼を受ける……。
京都にある巨大動物園から、一匹のカンガルーが消えた。
だが、飼育員はそんな事実はないとつっぱねる。
この動物園には謎がある。
密かに潜入を果たした探偵は、地下室に監禁されている行方不明に教授を発見する。
消えたカンガルーと教授の接点とは？
やがて事態は、京都を壊滅状態に追い込む大事件へと発展するのだが……。
と書くと、なんだかとってもハードボイルドみたいだが、本書は軽いタッチで書かれていて、とても読みやすい。
なぜ、そうなるんだーっ！
と思うところも多々あるが、そういうお話なので、それはそれでいいんだろう。
動物好きのあなたに。

新潮社
98/03/30
2800円＋税

やはり、キングというば、「スーパーナチュラルホラー」だろう。
かの大作「ＩＴ」に勝るとも劣らない長さと内容の、物語である。
しかも、この作品にはオマケがある。
同時発売された「デスペレーション」と連動し、そこここに
キング自らが仕掛けた遊びが散見されるのである。
砂漠をつっきっている一本道のハイウエイ。
その道のそばにある、見捨てられた採掘場のある田舎町。
ハイウエイを旅する人間たちは、その町の警察官に話かけら
れ、身に覚えのない罪で町へと連行される。
誰もいない町へ。
その町の住人はすべてが殺されていた！
採掘場の穴の底から出現した、タックという名のスーパーナチュラルな存在。
生き残った人間たちは、生き延びるためにタックと戦うこと
を決意する。
最後の最後にほろっと泣かせる作品。
それまでは、かなり怖いが。
レギュレーターズもあわせてお読み下さい。

角川書店
99/12/10
1600円＋税

彗星のように現われ、短い作家人生と、自らの人生を全うしてしまった、夏木柚香。
死の直前まで、ベストセラー作家であり続けた柚香の「神話」を描くために、売れないフリーライターの万智子の元へ依頼がくる。
娘、元恋人、崇拝者、友人、愛人。
柚香の周囲の人々の証言から浮かびあがる、柚香の華やかな一生。
四十才を迎え、男も仕事もうまくいかない万智子とは正反対の一生。
だが、それは本当なのか……？
「女たちのジハード」路線の篠田節全開の女性小説。
一人の女流作家の人生を通して、その周辺の女性の生きざまを丹念に描いていく。
生きるとは、生きていくとは、なにか。
ちょっと考えさせられる作品。

集英社
00/02/10
1900円＋税

地響きがする……と思っていただきたい。
で、始まる、連作小説。
妖怪小説作家・京極夏彦、渾身のギャグ小説ここに誕生！
渾身かどうかは知らんが、京極夏彦初のギャグ小説！
最後まで読みとおすのは、意外にけっこうベタで驚いた。
忠臣蔵のパロディである、「四十七人の力士」を筆頭に、本書に収められているすべての作品は、「すべてがデブになる」「脂鬼」「パラサイトデブ」と、各章、人気小説のタイトルをもじったパロディなっている。
さすが京極夏彦と思ったのは、物語を貫く「力士」というキーワード、存在を必ずや登場させ、なおかつタイトルに相応しいパロディギャグな小説として成立させている部分である。
全体の構成としても、前の話の主人公が次の話の作者というウロボロスの蛇的構成になっていて、うむむと唸るより他はない。
中身に対しても、唸るより他はないけれど。
この小説集に関しては、頭空っぽにしてなんにも考えないで読むことをお薦めする。
地響きがする……と思っていただきたい。
そうなのである。