な行-3

筑摩書房
12/07/10
1600円＋税

【収録作品】
日高川
玉響
城と山羊
続・城と山羊
猫ノ目時計

いつのまにか、「幽冥志怪」シリーズと銘打たれていた豆腐好きの怪奇作家猿渡くんシリーズ。
三作目にして最終巻。
巻末にオマケとして、猿渡くん年表がついているが、それによると、シリーズ三作の時系列はバラバラ。
基本怪奇幻想だけど、作品の濃淡はさまざま。
悪魔崇拝の島に潜入する中編「城と山羊」が今回の要のような気もするけど、最終話の「猫ノ目時計」の、わけのわからない切なさも捨てがたい。
怪奇と幻想、豆腐と伯爵。
もう、彼らと会えないのが残念で仕方がない。

集英社
12/04/20
1600円＋税

安政の大地震直後の江戸の町。
大きな体なのに母と姉に頭が上がらず、猫背の虎と呼ばれている同心見習い虎之助。
地震直下の非常時のため、定町回り同心に取り立てられ、混乱している町の治安にあたる。
倒壊した家から刺殺体が見つかる。
地震のどさくさに紛れて刺し殺されたようだ。
虎之助は調査を開始するが、そこには哀しい女の涙が隠されていた……
人情時代連作。
虎之助の成長と淡い恋を軸に、地震から立ち直っていく江戸の町をも描いていく。
ちょっと苦くて爽やかな青春物語。

角川書店
12/03/30
1600円＋税

強盗をした三人組、逃げる途中で急に車が動かなくなり、仕方なく以前目星をつけておいた廃屋へと身を潜める。
そこはとうに潰れたナミヤ雑貨店。
潰れたはずの店に、誰かが手紙を投函していった。
そこには悩み事が書かれており、三人組は面白がって返事を書き、外の牛乳ポストへといれておく。
彼らの返事は、相談者の人生を変えていく。時空を超えた手紙。
児童擁護施設の「丸光園」と縁のある人たちへ、連なっていくのは、空から誰かがそう願っているからかもしれない。
優しいファンタジー。
世の中捨てたもんじゃないと思いたい時に。

角川文庫
98/07/25
680円＋税

超能力を持つ霧原兄弟を描いた物語。
最終巻である六巻目は、初の書下ろしアナザーサイドストーリー。
群馬の山奥に位置する御厨超能力研究所。
その研究所に幽閉されるようにして暮している、霧原兄弟。普通でないことを悩み、普通に生きたいと願っている十代の少年たち。
まだ、彼らが何者でもなかった頃の物語。
研究所時代の物語が２本。
そして、本当に最後の作品となった、映画版の後の物語が１本。
やがて、霧原兄弟は数多くの支援者を導きながらの、長い旅に出る。
その姿は、深夜のテレビドラマから始まった物語が、数多くの支持者に支えられて、より深い物語になったのと似ている。
今も霧原兄弟は、この世のどこかにひっそりと生きているのである。

角川文庫
98/05/25
600円＋税

超能力を持つ霧原兄弟を描いた物語。五巻目は映画のノベライズ。
ノベライズというより、再構成された小説と呼ぶのが正しい。
時間の関係で語られなかったであろう、テレビと映画をつなぐ事柄を、こと細かくフォローしてある。
アークからの刺客を倒した兄弟は、己の運命を悟りつつあったが、未だ、普通の人間としての未練も持っていた。
アークは兄弟を「削除」することを決定し、洗脳能力を持つ第２の刺客を放った。
共感能力を持つ女子高生を中心に、アーク兄弟との戦いが始まる。
戦いの中で兄弟は更なる力に目ざめ、変革者としての運命を受け入れる覚悟を決める。
映像版としては、最後になるナイトヘッド。
好きだった人にも、知らない人にも、読んでいただきたい一冊。

角川文庫
98/02/25
600円＋税

超能力を持つ霧原兄弟を描いた物語。深夜ドラマのノベライズ、最終巻。
成長により、「マイナスの力」を封じることに成功した兄弟だが、相変わらず「アーク」からの攻撃は続いていた。
兄弟の指導的立場であった翔子は、人としての立場を捨て去りより高次の存在へと移行しようとしていた。
翔子と、アークの一因であった双見に導かれた兄弟は、アークの刺客と戦い、自分たちの道は自分たちで切り開く決意をする。
世界に変革をもたらすものとしての運命が、兄弟を待ちうけているのも知らず。
ドラマ版では映像の力でなんとなくわかった気になっていた物語が、言葉の形で更によく理解できるようになった。今読んでも非常に魅力的な物語である。

角川文庫
98/02/25
600円＋税

超能力を持つ霧原兄弟を描いた物語。三巻目も深夜ドラマのノベライズ。
ノベライズとはいえ、飯田氏は短い時間のドラマではじっくり描くことのできなかった部分を付け加え、いらない部分は容赦なく切り捨てていっている。
おかげで、ドラマよりもすっきりとした筋道が見える。
自分たちの超能力に「マイナスの力」という、人間の悪意の集合体を引き寄せる力があると気づいた兄弟は悩む。
一方、超能力者だけで構成されている「アーク」は、予知の及ばない、不確定因子である兄弟たちを排除しようと動きはじめていた。
彼らはまだ、己の宿命に目ざめてはいない。

角川文庫
97/12/25
600円＋税

超能力を持つ霧原兄弟を描いた物語。二巻目も深夜ドラマのノベライズ。
予知能力者神谷司は、世界滅亡のビジョンを見る。
その滅亡には霧原兄弟が関わっているという。
兄弟は世界を滅亡させるウイルスを作り出す女研究者を予知で知り、それを食い止めるために動きだす。
自分たちに課された大きな運命と宿命。
同じ超能力者たちが自滅していく姿を見ながら、兄弟たちは自分たちの道を模索していく。