キラークイン666

【物　語】
東北の片隅のとある港町。
イカが異常繁殖し、人を襲うという村で、謎の奇病にかかったセツコは無事、病気から生還し、ショウジとともにライブパブを切り盛りしていた。自分のバンドをクビになった弟リュウタは、その同級生で不良で80年代ロックなケン＆バー子を店でライブをやらせてやってくれないかと頼むが、ショウジは断る。
乗り込んできたケン＆バー子に、ショウジは白井貴子の音楽を聞いて、セツコが病気から復帰したという話を切々と聞かせる。白井貴子以外の音楽は、この店ではＮＧなのだ。呆れ返るケン＆バー子は店で暴れまくる。

病気のせいで子供ができない体になったセツコは、杉並区の会社員のいらない子供を養子に迎えることになっていた。明日やってくるはずだった会社員が、タイミング悪く店を訪れ、混乱の中、赤ん坊は事故死してしまう。
一方その頃、人気脚本家・宮藤は新宿アプルでやる芝居が書けずに苦悩していた。なぜか白井貴子を出すことを思いついた宮藤は、つてをたどって白井貴子Ａに会いに行くが、楽屋で紹介された白井貴子Ａは、写真で見るよりもでかく、邪悪に満ちていた。脚本を読んだ白井貴子Ａは逆上し、自分好みの脚本を書かせるべく、宮藤を拉致監禁した。

ショウジの店では更に混乱が続いていた。カリスマＤＪの天童が、ラジオ のクイズにの商品として、アプルで行われる白井貴子ライブのチケを4枚持ってきたのだ。
偶然にもクイズに正解してしまったケン＆バー子は、ファンでもないくせに、東京に行きたいという動機だけで、チケをもらう。おさまらないのは、大ファンであるショウジである。

天童は、ダーツ勝負で決着をつけようと言う。なかなか決らない勝負の中、バー子が養子の赤ん坊が死んでいることに気づく。気をそらさせようとして、会社員がケンの片目にダーツを突き刺した！
虐待＆傷害事件の発生である。が、どーしてもコンサートに行きたいセツコは、警察に届けることに反対する。赤ん坊の身代わりとして、杉並の会社員をダミオ という名前の赤ん坊とすることに決め、セツコ、ショウジ、リュウタ、ダミオの四人はそのまま車で東京に向かった。
残されたケンの前に邪悪な白井貴子Ａが現われ、ケンの出番はもうこれまでだと告げる。納得のいかないケンを唆し、舞台をめちゃくちゃにする復讐を開始する と、白井貴子Ａは邪悪に笑った。

車で東京に向かった四人だったが、リュウタの顔色がすぐれない。実は、出かけにバー子に告白されたリュウタは、つい流れでバー子を抱いてしまったのだ。そして、一緒に連れていくという約束をしてしまったという。
激怒するショウジ。チケは四枚、五人では数があわない。そんな中、車の前に飛び出してきたバー子を轢いてしまう。
バー子を置いて逃げてきたショウジたちは、セツコの祖母の家に逃げこむ。が、祖母が車に乗ったとたんに、爆発炎上。祖母は死亡する。祖母の葬式に出ながら、ショウジはダミオが悪魔っ子ではないかと疑いだす。

一方、白井貴子コンサートのリハが始まり、バックダンサーが過労死寸前になっていたし、拉致監禁されていた宮藤は、お家拝見の渡辺篤の協力でなんとか逃げ出すことができたようだ。

さて、車とともに白井貴子コンサートのチケットも燃えてしまったのだが、偶然にも近くの公民館でのど自慢大会があり、2等賞金は新宿アプルの白井貴子コンサートだと知る。しかもゲスト審査員として、白井貴子も来ている。
四人は飛び入り参加し、オリジナル曲で優勝をさらってしまう。白井貴子コンサートは、2等商品なのに。バカー！

もう、白井貴子は諦め、優勝商品の沖縄旅行に行くために飛行機に乗る四人。幻想の中に白井貴子Ｂが見えたりして、もう、めちゃくちゃな情況の中、セツコの奇病ノロノロ病が再発してしまう。沖縄旅行を断念して、彼らは西新宿にやってくる。

一方その頃、ウーマンリブの稽古が行われていた。脚本家宮藤は出演者から弾劾糾弾され、ついにはクビになってしまう。行き詰まった脚本家宮藤は、キャバクラで苦悩していた。
隣の席に、自分の舞台の登場人物であるはずの、天童が現われ、すべての情況を説明しだす。

ここ数日のついてなさを、ダミオの悪魔っ子とすることで説明づけようとするショウジは、ダミオの体に666の獣の数字がついていないか確認するが、何もない。その時、寝ていたセツコの額に666の数字が浮き上がった。悪魔っ子はセツコだったのか？

一方、天童の説明は続く。セツコの奇病というのは、実は精神的なもので、テトラポットの間でレイプされてしまったセツコを、ショウジが責めぬき、精神的におかしくなってしまったのだという。その時、キャバクラにイカが降ってきた。

セツコは、実は一枚だけ残っていた白井貴子のコンサートチケットをショウジに差し出し、こんなこになったすべての責任は白井貴子にあると示唆する。銃声とともにショウジは消える。
アプルでは、白井貴子コンサートが行われていた。一部と二部の幕間に突然、ショウジとダミオ、そして巨大にイカに頭から食われてしまった宮藤が現われる。
ショウジは、すべての責任は白井貴子にあると断言し、白井貴子Ａを殺そうとする。
その時、幻想の中の白井貴子Ｂが車いすに乗ったバー子を連れてやってくる。舞台の上には瀕死のダンサーもいる。ケンもいる。白井貴子が歌うと奇跡がおこった！
だが、セツコだけは現われない。話の流れ的に現われなきゃおかしいのに、現われない。悲嘆するショウジ。その時、セツコが「わたしはショウジのファン」と 歌いながら階段を降りてくる。ショウジは自分が白井貴子ではなく、セツコのファンだったと心底気づく。白井貴子を中心としたステージは、静かに幕をおろすのだった。

【感　想】
相変わらず、ウーマンリブははちゃめちゃですなあ。
特に今回は、どっちかというと「魂」に近いような気がするんだけど、この内容でアプルというのが、この芝居の一番のキモではないでしょうか？
セットといい、小道具といい、すげーいかにも金かかってるーうのに、この内容。この素晴らしさ加減が、ウーマンリブ。
芝居を見に来た人たちにとっては、肩すかしでしょうが、ウーマンリブにそんなのを求めちゃいかん！　ハイレグに芝居を求めるのと同じぐらいいかん！　でも、そーゆー人たちが来ないと、アプルの客席なんか埋まらないわけで、でも、そのおかげでチケのとれなかった人もいっぱいいるわけでー。

巨匠になるのも考えものってことですかね。

個人的には、はちゃめちゃだなあと。
それしか感想なかったりして。
白井貴子嬢のコスプレと、棒読みすれすれの味のあるセリフまわしが、すっげーハマった。あれこそが、白井貴子がウーマンリブに出る理由でしょう。白井貴子がなぜウーマンリブに出るのか？という疑問に対する答えを約３時間かけて、提示して見せてくれたクドカン、ありがとう！
役者さんもみんな、存在感あって素晴らしい。存在感だけでなく、吸引感も抜群で舞台から目が離せなかったですね。そーゆー意味では、一番存在感がなかった のは、宮藤さん……。右近さんも、もうちょっといじれればなあ。峯村さん猫背さん、すごいの一言。皆川さん荒川さんもすごいよかったし。

おもしろかった、の一言で終わりにしていい舞台。
生バンドを導入しての、音楽劇でもあり。劇中歌は6曲。作詞は全部クドカン。キャスト表に歌詞も載ってたりして、ちょっと新感線ちっく。これから、この路線でいくのかな。
近いうちに、「魂」と融合を果たす気がしないでもないでもない。