七人の恋人

阿部サダヲ	【オレンジの恋人】
三宅弘城	【青い恋人】
少路勇介	【緑の恋人】
星野源	【黄色い恋人】
宮藤官九郎	【赤い恋人】
尾美としのり	【黒い恋人】
田辺誠一	【白い恋人】
松尾スズキ	【ナレーション】
薬師丸ひろ子	【ナレーション】

【物　語】
1 FIRST・KISS
放課後の音楽室、白い学ランのイケてる田辺くん(田辺誠一)は転校生尾美くん(尾美としのり)にキスの手ほどきをしている。音楽の先生に憧れている尾美くんは先生とキスをしたい、でも、恥ずかしい。そんな尾美くんに田辺くんはメントスを口にしながら、上から目線でアドバイスしているが、実は性犯罪者な田辺くん、乱入してきた軽音部(宮藤官九郎/三宅弘城・星野源)にボコボコにされてしまうのだ。伏目がちに去って行こうとする尾美くんに、田辺くんは「尾美くんのファーストキスを守る会」を結成したと言い出し、テーマソングを歌い出す。そんな田辺くんに感激した尾美くんは一緒に歌い出すが、田辺くんは尾美くんを蹴っ飛ばして去っていくのだった。

2 ナンバーワン・イン・ザ・UNKO
巨大なウンコに埋まっているホストのヒサシ(阿部サダヲ)に後輩ホスト・ユースケ(少路勇介)が売り上げ報告にくる。今週もNo.1はヒサシ！　気分のいいヒサシは成り上がった半生を語り出す。でっぱ(星野源)の伴奏で。回想のヒサシ(田辺誠一)は社長夫人のキョーコ(尾美としのり)に待ち伏せされていた。キョーコからキャバ嬢ナオミ(三宅弘城)に乗り換えたヒサシだったが、キョーコはハサミを出して復縁を迫る。そこにナオミがやってきた。ヒサシを取り合う二人だが、キョーコは負けを認めて引き下がる。だが、ヒサシは一人になりたいとナオミを帰す。夜空を見上げるヒサシ……回想シーン終わり。余韻に浸るヒサシにユースケが言い放つ。「さっさん、なんでウンコに刺さってるんっすか？」動揺するヒサシ。「人間ってのは主観で生きてるんだよ、俺が刺さっているコレがウンコだなんて思ったことなかった。お前が言葉を発する前はな。でも、今これはウンコになった」「神様も仏様もいねぇ。でも、こんなでっかいウンコするヤツがどこかにいるんだよ、怖ぇぇよ！もう帰る」　エンジンをかけるとウンコが動き出す。歌舞伎町の夜を巨大ウンコが疾走する。

3 マタニティ堀内
産婦人科のマタニティエアロビ教室にきた妊婦鈴木(三宅弘城)と佐藤(星野源)。同性愛者のマタニティ堀内(阿部サダヲ)のテンションは高く、指導は激しくドクター五十嵐(田辺誠一)から注意を受けてしまう。しかし、堀内は更に激しく踊り、佐藤は生まれそうになってしまう。五十嵐は看護師(宮藤官九郎)にセクハラしつつ、現場に駆けつける。五十嵐に会えた堀内は嬉しそう。しかし、「ホモに妊婦の気持ちがわかるわけない」と言われ号泣する。謝る五十嵐に嬉しそうな堀内、その時、堀内に嫉妬した佐藤が復帰し、堀内とのエアロビ対決になる。が、やっばり生まれそう。佐藤に負けた堀内はバンドマン(宮藤官九郎)と子供を作ろうと走り去る。佐藤は分娩室に行く前に「先生が好きです」と告白する。五十嵐はニッコリ笑って「ボクもホモなんです」えぇ……！

4 ほとんど×三宅マン
等身大のヒーロー三宅マン(三宅弘城)は子供の味方だ。小学生テツロウ(阿部サダヲ)はエロ本を持ってきてくれと三宅マンに電話する。が、いつまでたっても来ない。やっと来たけど、エロ本を持ってこなかったので、二人で鬼書房に買いにいく。店主・鬼としのり(尾美としのり)は虫の居所が悪く、エロ本を立ち読みしにきた田辺くん(田辺誠一)を裏でボコボコにする。エロ本を買ってきてくれと頼むテツロウだが、実はまだ三宅のままだった。変身する間をフリークークで繋ぐテツロウ。変身が終わったが店主が戻ってきてしまった。そこに同級生の巨乳子(宮藤官九郎)が帰ってくる。なんと彼女は鬼店主の娘だったのだ。なりゆきで公園でデートする二人。だがテツロウはもう決壊寸前。三宅マンに助けを求めるがやってきたのは弟子の少路マン(少路勇介)、そして二番弟子の源ちゃんマン(星野源)。テツロウのためにエロ雑誌からDVDを毟り取ってきた源ちゃんマンは鬼としのりに捕まる。巨大化した鬼としのりを田辺くんがエロ妄想が具現化したミュータントだと解説する。巨大化した三宅マン、少路マン、源ちゃんマン、田辺くんの4人で鬼としのりを倒した。鬼としのりは巨大なウンコを放り出した。そのウンコは歌舞伎町へと落ちていった……　一人残された巨大化した田辺くんは二日後に迫った女子高生との合コンに参加できるのか。ほとんど田辺くんのPVが始まる。

5 SHOW-Z.com。
ヒップホップの大会のために練習しているショージ（少路勇介）の元に、暗黒ゴスロリに身を固めたレイカ（阿部サダヲ）がファンだと言って近づく。 仲間のオミ（尾美としのり）がやってくると、レイカは顔を隠すが見つかってしまう。オミはレイカを「俺の彼女」と紹介するが、レイカは否定する。オミはレイカと小声でヒソヒソ話をし、「解決しました」とレイカの肩を抱くが、レイカはあからさまに嫌がる。オミは大会に出られなくなったとショージに言う。ゴスナイトに行くレイカの部屋で犬と留守番をしなきゃならないからと。キレるショージ。その時、仲間のクドウ(宮藤官九郎)がやってきて、レイカに気づく。レイカはクドウの出待ちをしていて、ライブは見ないのに出待ちだけして、新幹線のメンバーより早く地方の出待ちをしてたりして、だんだん気になって付き合ってみたけど、薬飲んだり、手首切ったり、クドウの脇腹刺したり……「次はお前の番だ」と言われてショージパニック。わたわたしているうちに、レイカがオミを背後から切り付け、逃げる。暗転しながら、倒れたオミを会報する仲間たち。SHOW-Z.comとマタニティのコラボ映像が流れる。

6 むねさん。
男（星野源）は一人、彼女の実家で彼女の家族たちと食卓を囲んでいる。彼女は道路が混んでいてまだ着きそうにない。父（田辺誠一）、弟（阿部サダヲ、三宅弘城）、母（宮藤官九郎）、犬（少路勇介）たちは親しげ食事を進めるが、男は彼女と付き合っていることを言い出せずにいる。そこに、知的障害を持つむねさんがやって来る。むねさんは昔、すごく頭が良かったのだが、事故に合ってしまったのだ。だが、その頭脳は彼の中でまだ生きていた。困っている男にむねさんはテレパシーで家族のヒエラルキーを教える。弟の発言権は犬より下のため、犬を黙らせようと男は犬を殴り倒し、家族から非難される。パニックになった男は、彼女と付き合っていると口走ってしまう。すると父は娘は昔、むねさんが好きだったのだと言って、むねさんの首からかけているお守りの中から、娘の書いたラブレターを取り出し、読み上げる。と、ラブレターをゴミ箱に叩きつける。優しい笑顔で父は、娘は帰ってきたらむねさんと星を見に行くけど許してやってのと、男にカエルを渡して、暗転……

7 七人の恋人
音楽の教師をしているという女性が夢を見ていると、ナレーションで語る。夢の中には、七人の恋人候補がいる。青い恋人(三宅弘城)は爽やか系、赤い恋人（宮藤官九郎）は情熱系、オレンジの恋人（阿部サダヲ）は柑橘系、赤とオレンジは色々かぶってるよねってことでケンカになり、青も参戦して、先生は困ってしまう。黄色い恋人（星野源）と緑の恋人（少路勇介）がやってくるが、太陽の色のことで、またケンカになる。ケンカしながら恋人が去ると、カレーうどんを啜っている白い恋人（田辺誠一）が現れる。彼は股下が180センチある。黒い恋人(尾美としのり)がやってくると、そこは一番最初の音楽室だった。誰を恋人にしようかなと音楽の先生が楽しく思っていると、恋人たちは楽器を持って先生のために合唱する。

【感　想】
宮藤さんの「コント欲」解消のために企画されたらしい、ウーマンリブショートコントぉぉぉぉぉ！
というか、いやこれはもう、阿部サダヲ祭りじゃないですか、すごいよ、阿部ちゃん出ずっぱりだよ。
出てくるキャラが濃い濃い濃すぎるけど、やはりなんと言ってもレイカがすごかった。目の周りも唇も真っ黒で、笑い方は「ししししし」だし、なんか、緑のスライムみたいので遊んでるし、すごい、怖い、何が怖いって、舞台が終わったら本多劇場の楽屋口に居そう！と思う、微妙にリアルな存在感ですかね。

リアルな存在感と言えば、どのコントも夢のような、現実にはありえない設定ばかりなのだけど、でも、やはり微妙にリアルな感じがして、その微妙なところがすごい笑える。
巨大ウンコが落ちてくる歌舞伎町とか！　どこの歌舞伎町だよ。見たいよウンコに刺さってるホスト！
どのコントもバカバカしいし、何も考えないで笑えるけど、でも、ちゃんと話として完結してるのがすごい。最後の「七人の恋人」が周り巡って一番最初のコントに繋がるところとか、美しき円環じゃないですか。
バカバカしいのに、細部はちゃんと考えて構成されている、すげぇよ宮藤さん。好き。

大人計画男性陣に田辺誠一さんというクドカンレギャラーメンバーに、一歩も引けを取らない尾美さん、すごかったなあ。「むねさん」とかもう、普通に俳優さんは引き受けないんじゃないですか、あんな役。
くだらないことを真面目にやる。そこから生み出される巨大な笑いのパワー。
ああ、ありがたいありがたい、楽しいひとときでした。