轟天vs港カヲル

【物　語】
大スター港カヲルは、マネージャーのパーク近藤と32人の愛人と一緒に、映画撮影のために米国へ来ていた。 若い時は、伊藤英明激似のカヲルだったが、不摂生のため当時の面影なくデブになってしまった。デブには仕事はやれんと、映画監督にダイエットを命じられるが、カヲルは通訳のベンジャミンに夢中で痩せる気配もない。
そんな時、日本ではカヲルの愛人三号・気仙沼ちゃんが殺された。
気仙沼ちゃんは、カヲルの本妻・その子に、カヲルをデブにした責任をとれと殺されたのだ。三陸の美味しい魚介でカヲルはデブになったのだが、そのおかげ で、妻の経営するダイエット食品販売会社は倒産したのだ。そりゃ、そーだ。デブが広告塔のダイエット食品なんて、誰が買うかい。

気仙沼ちゃんを亡き者にしたその子は、愛人の白金宏とともに、放浪の格闘家・剣轟天に仕事を依頼するために、噂を頼りに池袋にやってきた。
轟天は、儲からない格闘家生活に見切りをつけ、池袋のうどん屋でアルバイトをしていた。だが、根っからの不器用さが災いし、仕事がなかなか覚えられない。そんな轟天を指導しているのが、中島だ。たまたまそのうどん屋にうどんを食べにきた、その子と白金宏は紆余曲折を経て、轟天にカヲル殺しを依頼する。

一方、愛人の危機にカヲルは日本へと戻ってくる。たまたまはいったうどん屋で、店員の轟天と出会い意気投合してしまう。後で遊ぼうと約束し、二人は別れる。
池袋の高級ホテルに宿をとり、カヲルはパーク近藤から轟天に狙われていることを聞く。愛人二号は巨乳を改造した銃で轟天を倒すといきまいていた。その時！

その子と白金宏の依頼を受けた轟天だったが、偶然ベンジャミンと出会ったことから、依頼などどうでもよくなってしまった。逆ナンされたと信じこむ轟天は、ベンジャミンのハイソックスを奪うため、パトラッシュに命じて追跡させる。
パトラッシュはベンジャミンの居場所、すなわちカヲルの部屋に侵入するが、二号に倒されてしまう。そこにやってきた轟天はカヲルの存在に気づきもしない。カヲルもまた。
それから、いろんなことがあったが、まったくお互いに気づきもしない二人に業を煮やしたその子と白金宏が、カヲルの愛人32人を誘拐する。しかも、愛人たちは、妻たちが用意した巷カヨルに乗り換えてしまったのだ。
がっくり来るカヲルにその子は、カヲルが太ったために会社が潰れた恨みを晴らしてやると叫ぶ。

やっと、お互い敵同士と認識した轟天とカヲルは、カヲルの五階建て愛人マンションで決着をつけることにする。
今のままではカヲルには勝てない。危機を感じた轟天はバイトをしながら、中島先輩とともに修行に励む。中島から合格をもらったカヲルは愛人マンションへと向かう。
パトラッシュとともに屋上に忍び込んだ轟天は、五階から順に降りていくことにした。五階には愛人五号、四階には愛人四号、三階には幽霊の愛人三号、二階には愛人二号、と非常にわかりやすく戦いは続く。一階にいるのは、当然愛人一号だ。
すべての愛人を倒し、地下のカヲルと最終決戦。お互い互角のパワーのため、戦いは決着がつかない。

このまま永遠に戦うのかと思われたその時、その子が乱入し、まだカヲルを愛しているのだと叫ぶ。愛人マンションの真ん中で愛を叫ぶ。勝手に叫べ。カヲルもまたその子を愛していた。もちろん、愛人も愛していたが……
戦う理由がなくなった二人は、それぞれの道を歩き始める。

【感　想】
ええと、なんだかラストの記憶が曖昧なので、ひよっとしたら違うかもしれません。
ウーマンリブの芝居は、一瞬一瞬のギャグが面白く、笑っているうちに、ストーリーが霧の夜のようにおぼろにかすんでいってしまうのです。もちろん、これは集中力のない自分が悪いんだが、ああラストが思い出せないよう。

新感線一濃いキャラである轟天を主役に据えての芝居。
まず、この発想がすごすぎる。あまりの濃さに本家新感線でさえ、三部作ののち封印していたキャラだというのに、恐ろしい。怖い人だ、アンタは、宮藤さん！ じゅんさん、不惑を過ぎてますます元気。底なし体力には本当に感服。
つーか、よく考えたら、じゅんさんの舞台、今年これで四本めの観劇ではないか、すごすぎる。

オープニングは新感線で使用している、ジューダス・プリーストの曲をそのまんま使うという、徹底ぶり。がしかし、曲の最後でウーマンリブになるのには笑った、笑った。いいなあ、パロディがちゃんとパロディになっているのは、気持ちいいねー！
轟天の動きや行動なんかも、本家新感線と同じような感じなので、無理にキャラを動かしているという感じがない。
轟天を見たことがない人も。轟天のファンの人も同じように楽しめたんじゃないかと思うが、どうだろう。少なくとも、過去、轟天作品を見た自分は、違和感を全然感じなかったですわ。

個人的に面白かったのは、宮藤さん演じた中島先輩の呼び方。
劇中で、じゅんさんが「かずきさん」と呼んでいるので、新感線座付き作家の中島かずき氏がモデルなんだろうけど、じゅんさんは「ナカシマさん」と呼び、他の人たちは「ナカジマさん」と呼んでいたのだ。なぜ、呼び方に統一性を持たせなかったのか、謎。聞いててわかるのに、あえて直さないところに、なんだか深い意味があるのかと、ついつい考えてしまいたくなる。
ちなみに、新幹線座付き作家の中島さんは、「ナカシマさん」である。

カヲルの愛人を奪う「巷カヨル」は日替わりゲストが登場。
自分の見た回は、木更津のウッチーこと岡田義徳くんでしたが、他の日は阿部ちゃんとか荒川さんとか中村獅童とか、クドカン人脈が出演していたらしいです。

大人計画女優陣、いつにもまして濃い濃い濃い、脂染みがでそうな程、濃い。
愛人頭の平岩紙ちゃんは、アンミラ風衣装で可愛いが、あとははっきり言って……ゲテモノである。
まあ、思えば、ウーマンリブで大人女優のみなさんは、あんまりいい目にあっていないような……。
伊勢志摩さんなんか、二幕ではキッス風のメイクをして出てきた。最高だ。
宍戸さんはオバサン、たがめさんはヤワラ風柔道少女、猫背さんは名前から推測される通り、GOGO夕張もどき女子高生。
池津さんにいたっては、金髪片目ロングドレス車いす巨乳改造銃である。はははは。

宮藤さん、珍しく出番が多い。
しかし、あの中島先輩というのは何者なのだろう。バイト先の先輩というだけでなく、轟天に格闘修行もさせていたし。実はすごい裏設定がありそうで……なさそう。
武沢さん、すごーく久しぶりに見たというか、大人時代の武沢さんははっきり言って、印象に残ってません。改めて見ると、大人役者さんにはいない、線の細いエキセントリックな感じが良いなあ。スタイルもいいし、なんだか、荒川さんと双璧になりそうな気がする。大人計画に戻ってくる気はないんだろうか。松尾さ ん、どうですか、どうですかあ！！！！