アイドルを探せ

【物　語】
富士樹海……そこは自殺の名所でもあるが、不法投棄のゴミ捨て場でもある。
ゴミの山の樹海に一人の男がやってきた。ゴミたちは、久しぶりの自殺志望者に大はしゃぎだ。自殺志望者であるワタナベは、ゴミを相手に自分の半生を切々と語りあげる。

いろんな仕事を転々としたワタナベ。マルチの販売員になったり、売れないアイドルのマネージャになったりした。そして、ワタナベが自殺を決意したのは、その売れないアイドルツララのせいでもあった。
男にだらしのないツララは、ヒモであるホストの剣に言われて、とある寂れた商店街に営業に来た。ブログの女王をめざしているツララは、マネージャーのワタナベに命じて、5分置きぐらいでブロマグをアップさせている。
ツララは剣と公園でいちゃいちゃしているうちに、紙袋をかぶったホットドッグ売りに興味を持つ。オマケと名乗るホットドッグ売りの顔は、焼け爛れていた。仲間うちのリンチでやられたのだ。

一方、その公園では季節はずれの水着姿で、マヨと石黒がお互いの友情を確かめあっていた。二人は親友。だから、ＡもＢもするがＣはしない。なぜなら、親友だからだ。親友ですけど、何か？
だが。マヨの旦那であるヤクザはそれでは納得しない。50万払えば、二人の友情に納得してやると言われたのだ。だから、二人は50万円を作らなければならない。二人は借金まみれの剣から、金を取り立てることにした。

マヨと石黒からの借金催促の電話を受け、剣はツララを商店街に連れて行こうとした。実は、アイドルの営業というのは嘘で、剣はツララを売るつもりだったのだ。
それも知らず、ツララは無邪気に公園の鯉にエサをやっている。鯉はものすごい勢いでエサに喰らいついてくる。ものすごい勢い……え、ちょっとヤバイってそれは！

さて、商店街のスナックでは浅利ケータがツララを待っていた。今日はケータの出所祝いの日。オマケに火をつけたリンチのせいで、ケータは刑務所に放り込まれていたのだ。
実はワタナベが書いているブログの情報を見ながら、ケータとアイドル研究会は盛上がる。ブログによると、ツララは隣のケータの父親の店でカラオケを歌っているらしい。 実際に歌っているのは、ワタナベだが。
ワタナベは、ママのミョンミョンを殴り、売上げを盗んで逃走するつもりが、隣の店に入ってしまう。そこにはケータ達一行がいた。
ワタナベを追ってやってきた秀吉にケータは、猛烈に反発する。ケータは自分の母親を捨て、ミョンミョンに走った父親を憎んでいたのだ。店内は大騒ぎ。
その時、池の鯉に全身を食い破られたツララが店に飛び込んでくる……

その後の展開は語られないが、まあいろいろとあったんだろう。ワタナベは自殺を決意し、富士樹海を訪れ、ゴミたちに自分の半生を反省の色なく語るのだ。
「ゴミとして生きるより、死んで輝きたい」
と叫び、ワタナベはゴミたちとオコメ券の歌を熱唱するのだ。樹海はかくも深く、陽の光が射すことはない。

【感　想】
たぶん、偶然なんだろうけど、宮藤作品、松尾作品ともに、過去の回想をはさみつつ、現在が進行していくという構成。ふたつとも、一時間ちょいという小品なので、この手の構成がやりやすいんだろうか。それとも、本当に純粋な偶然？

こちらの主役は吐夢さんだが、自分の中では村杉祭絶賛開催中であった。
村杉さん、マジすごいよ、肉体！
もう、ヒガシ（東山紀之様）を軽く抜き去って、肉体美中年としての名乗りをあげていただきたい！　村杉さんって、ヒガシより年上なんだよねぇ。40代の☆として輝き続けて欲しい。マジ、ちょっと池津さんに嫉妬した女子もいたに違いない（笑）

村杉さんと池津さんの友情と言い張る、愛人同士のやり取りがまた濃厚で、濃厚なんだけどギリギリで踏みとどまってるとこの、エロス感がいいんだよなあ。できることなら、こっちのカップルを主役に見てみたかった気がする。
たぶん、今までの松尾作品とはちょっと違ったものが見れたかも？
「業音」に近いかなあ、どうだろう。

一方、主役の吐夢さん。
ワタナベがそうなんだろうけど、非常に影が薄い。これはそういう演出なんだから、仕方ないんだろうけど、なんでどうして影が薄いかと言えば、これと言った見せ場がない。
見せ場という意味ならば、阿部ちゃんのほうがまだあったかも。中尾彬を髣髴させる（というか真似？）の、ねっとりキャラはけっこう客席で受けてたし。
紙ちゃんの時報アナウンスになりたい少女とか、たがめさんの子分キャラとか、宍戸さんの場末のバーのママ（ものすげー似合う）とか、伊勢志摩さんの謎の中国人ママとか、近藤さんのどうしようもないチンピラホストとか、猫背さんのバカ丸出し着エロアイドルとか、特殊メイクの顔田さんとか、コーラ一気飲みのバカ息子の皆川さんとか、使用済みコンドームがお似合いの宮藤さんとか、お米券の池田成志さんとか、みんなキャラ立ってる！

樹海のシーンでは中心人物のはずなのに、樹海のゴミのほうが存在感があるってどうよ

松尾さん、具合悪かったみたいだし、どこまで演出に関わってるのかわからないけど、ちょっと未完成っぽい感じはしたなあ。
まあ、未完成っぽい作品を、人気劇団になってしまった今の大人計画があえてやるってところが、本作品の一番のテーマなのかもしれないと、あえて深読みしてみました。
ホントのトコロはダレにもワカラナイ。