来来来来来
劇団本谷有希子

たった一つの思い出があれば、人は生きていける。
裏を返せば、その思い出が奪われてしまったら、人は生きていけない。
自分だけでなく周りみんな巻き込んで修羅となる。
人の心の奥底の恐ろしさを存分に見せてくれた芝居。
ユキコ、恐ろしい子。
美しすぎて人間味のないりょうちゃんが、最後の最後で修羅となる。
それがもう、怖くて怖くて。
木野花さんの嫁いびりなんて、人間らしくて可愛いもんじゃないかと思える。
普段穏やかな人は、怒らせてはいけないのだ、絶対。
心のうちに、何を飼っているのか、わかったもんじゃない。
何か一つだけあれば、それを錨としてそこに佇むことができる。
錨はまた怒りだ。
底のない怒りは押し黙ったまま、無意識領域に溜まりやがて爆発する。
爆発する瞬間にむかって、粛々と物語は展開する。
その冷静さが怖い。
本当の鬼は間違いなく本谷有希子だ。