作品データ
公開日：2006年6月10日
監督 ：堤幸彦
脚本 ：蒔田光治
主題歌：Joelle「ラッキー・マリア」
キャスト
仲間由紀恵【山田奈緒子】
阿部寛【上田次郎】
生瀬勝久【矢部謙三】
片平なぎさ【筐神佐和子】
堀北真希【西田美沙子】
平岡祐太【青沼和彦】
野際陽子【山田里見】
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見 所
まさかの映画第２弾。
もはや、堤監督と言えば「トリック」と言えるほどの代表作。
代表作がいくつもあるというのは、それだけすごいということでしょう。
今回の見所は、モテる上田。
多少悪のりしている部分もありつつも、それがもう完全にトリックワールド。
堤監督の魅惑の世界へ、ようこそ。
あらすじ
上田次郎（阿部寛）の元に、青沼和彦（平岡祐太）という青年が依頼にやってくる。10年前、行方不明になった幼なじみの西田美沙子（堀北真希）を助け出して欲しいというのだ。10年間音沙汰がなかったのに、つい最近、美沙子から手紙が来たのだという。その手紙には「もうすぐ私は殺されます」と書かれていた。
美沙子は関東沖合いに浮かぶ島・筺神島に幽閉されているらしい。筺神島には、一夜にして巨石を山の頂きまで動かしたという伝説を持つ霊能者・筺神佐和子（片平なぎさ）率いる「箱のゆーとぴあ」と呼ばれる宗教団体が暮らしている。 一方、相変わらず売れないマジシャンを続けている山田奈緒子（仲間由紀恵）は、マジシャンのアシスタントとしてショーに出ていたが、消失マジックに失敗してあっけなくクビになる。失業した山田はしたかなく、上田とともに筺神島へと潜入する。
熱心な見学者を装った二人は、夜中こっそりと修行場を探索する。すると、妙に壁の厚い部屋があるではないか。上田の空手で壁を破るとなんとそこには、隠し部屋があり、美沙子が暮していた。
美沙子は佐和子の後継者として、この島に連れられてきたのだと言う。だが、自分には霊能力はない。しかし、佐和子は美沙子に信者に霊能力を見せるように言う。追い詰められた美沙子は、青沼に手紙を書いたのだ。
筺神佐和子は、箱の中に真実の扉が開くという触れ込みで、箱の中から瞬間移動してみせる。それは山田が失敗したトリックと同じもの。山田は毎度のことながら、偽霊能力物であると糾弾するが、いつものように配下の者たちから追われることになる。山田、成長がない。
しかし、山田が逃げている間に、上田が美沙子を連れ出すことに成功する。美沙子を海岸に隠し、上田は修行場に戻る。そこでは、山田が糾弾され、両手をしばられて箱に閉じ込められる寸前だった。上田は山田にキスするフリをして、刃物を渡し、山田は無事に箱から脱出する。
隠しておいたボートで島から脱出しようとした三人だが、なんとボートは信者によって沈められていた。山田は佐和子が使った巨石を動かすトリックで、ボートの重しをどかすことを提案し、なんとか三人は東京に戻ることができた。
さて、美沙子の故郷である富毛村だが、おりからの合併ブームにのり近隣の村と合併することになった。そのついでに市会議員の選挙を行うのだが、何を思ったのか山田里見（野際陽子）が立候補した。文字の力で数多の政治家を成功に導いた里見は、今度は自分が成功したくなったのか……
そんな母の行動を知らず、山田は上田とともに美沙子を富毛村へと連れてきた。再会を喜ぶ幼馴染の二人。だが、事態は急展開する。
美沙子を追って、佐和子が村にやってきたのだ。美沙子を返さなければ、富毛村を消してみせると。富毛村は酸素濃度が高いのと、増毛の湯ぐらいしか売りのない、山奥の寒村だ。不安そうな村人たちに山田は、力強く大丈夫だと保障する。
佐和子は村人たちを村から離れた広場に集めると、霊能力で村を消した。村人たちは山田を糾弾し、いたたまれなくなった美沙子は、佐和子の元へと戻る。
更に佐和子は、火をつけた箱から瞬間移動してみせる。それを山田にもやってみろと言うのだ。佐和子のトリックを確信している山田はその申し出を受けるが、箱の中にはどこにも仕掛けがない。火はどんどん燃えてくる。このまま死ぬのかと思った時、地面に仕掛けがあるのに気づく。とってを引っ張り、地面の中に脱出する山田。
そこは、地下の通路だった。通路をたどっていくと、佐和子が山田を待っていた。このまま何も言わずに、この村から出ていくようにと佐和子は言う。自分は昔、とても貧しく子供を手放したことがあった。だから霊能力で金持ちになったのだと。山田は佐和子を拒否し、別の道をいく。明るい。出口だと思いきや、そこは高熱の温泉が湧き出ている池の真上だった。山田、絶対絶命。
一方、美沙子を探しにいった上田は、佐和子の部下に監禁されている美沙子を見つける。空手で部下を倒した上田は、追いかけられ山腹の洞窟へと飛び込む。洞窟をたどっていくと、なんと山田が温泉に落ちそうになっているではないか。そういう上田も、落ちそうになっているのだが。見にくい争いを繰り広げながら、崖をのぼった山田はそこに佐和子の姿を見る。佐和子は、山田を温泉に突き落とそうとするが、そこに村人に連れられた美沙子がやってくる。
美沙子は佐和子を自分を捨てた母だと呼ぶ。佐和子は否定し、自分から高温の温泉へと飛びこんでいった。
たまたま増毛の湯に湯治に来ていた矢部（生瀬勝久）と秋葉（池田鉄洋）は、佐和子の配下の信者たちを逮捕した。美沙子は村へと戻り、忘れかけられていたが選挙も終わり、里見は落選した。合併後の村の名前を書き間違えていたのが、敗因だ。
今回も無事に事件を解決したが、山田は上田と関わるとろくなことがないから、もう二度と会わないと宣言する。上田は、黙って山田の背中を見送るだけだ。アパートに帰ってきた山田の見たもの……それは、空き地。山田のいない間に、建て直しにためにアパートは解体されていたのだ。
山田は放り出された荷物を抱えて、上田の後を追う。上田は山田を待つかのように、ゆっくりと車を走らせている。おぽんちコンビの今後はいかに？
感 想
「完……かも」
と、ラストシーン、引いた映像の片隅に書いてあったんだけど、まだ続きをやるつもりなんだろうか、堤さん！
そもそも、トリックとは「霊能力者の嘘を暴いていた山田が、実は本物の霊能力者だった」というフロックがテーマになっていて、それはテレビシリーズの1で完結、うんと無理しても2で完結しているのだと思う。
だとするのならば、劇場版1、シリーズ3、新作ＳＰ、劇場版2というのは、もはや同じキャラクタを使った、パラレルワールドの話だ。つまり、「お姫さまは王子さまと幸せに暮しました」の後にある話というか。後日談？ 完結したあとでも日常は続く。続けようと思うのならば、延々と続くのだ。
明確な終わりを失ってしまったトリックシリーズは、いつまで続いてもいいし、いつ終ってもいいという、ぬるさを手にいれた。
今回の「劇場版２」も、オタじゃなきゃ楽しめないとか、新規が理解するのは無理とかいろいろと言われているが、それはもう仕方がない。
だって、この「トリックワールド」というのは閉じた世界だからだ。
ビューティフルドリーマー。
山田が目覚めるまで、この世界は続く。終っても続く。
てな感じのことを見ながら考えてしまったのだけど、ネタ的にはもうさすがに厳しいかなあとは思う。
村消失トリックって、テレビシリーズのどっかでやらなかったけ？ やらなかったとしても、すでにデジャブを誘発するぐらい、手に馴染んだネタなのであるな。
今回の裏テーマはベタなんじゃないかと、疑うほど、今回はベタが多くて、ちょっと苦笑。
元祖双子芸人ユートピアが出てきた時にはもう、意識が100万年彼方にすっとんでいってしまいましたよ。
そこまでするか！
選挙シーンの無意味な芸人たちの登場も、はははと乾いた笑いを誘う素敵なスパイスだ。
今回一つ残念なことがあるとしたら、里見のエピソードが本編とはまったく絡まなかったということだ。あのへんの処理をもう少しきちんとしていたら、もう少し奥行きのある作品になったのに。
まあ、トリックには奥行きなんか必要ないかも。平面を立体に見せるトリックなんか、初歩中の初歩だろうし。