ドブの輝き

【感　想】
松尾スズキ、降番！
初日一週間に発表されたこのニュースで、演劇界には激震が走った……かどうかは知らん。が、大人計画ファン、松尾オタにとっては、非常に残念な出来事になったことは確か。
しかし、代役が池田成志さんということで、不安に思った人は一人もいなかっただろう。
いや、実際、池田成志さんは松尾さん以上に異常に、舞台に馴染んでいたのだ。その馴染み方は半端じゃない。さずか、「脇を固めようなんて思ったことがない」と放言（失礼）する方だ。ここは敬意を表して、成志先輩と呼ばせていただきたい。
成志先輩、最高っす！！！！！

そんな波乱含みな、3年ぶりの全劇団員による本公演。自分の中では、少路さんと星野さんが劇団員ではなかったという、衝撃の事実が明かされた公演でもあった。そして、宮沢さんのポジションが相変わらず、わからないのだ。あんた誰？
休憩なし約2時間半の上演時間の中で、宮藤作品、井口映画、松尾作品という濃密濃厚な三本立て。これでもかという叩きつけるような、濃厚波状攻撃にファンは息絶え絶えに喜び狂うのであった。
なんつーかもう、すごいよ、松尾さん。

一般的知名度がない時代ならともかく、今、ある程度のポジションを得たこの時点で、こんなくだらない（とあえと言わせていだたく）ものをやってしまうという精神が良い。それだけ、追い詰められてたのかなあと思うと、なんか泣けてくるが、くだらなくても崇高でも、批評性や時事性があってもなくても、大作でもスポンサーがついてなくても、舞台の上に大人役者の皆さんがいれば、それは大人芝居なんだよ、松尾さん！
と、声に出して言いたい、オタ心。

気がつけば、大人観劇歴十数年（詳しい年月は調べるのが面倒、最初に見たのは溶解ロケンロールだから、調べてちょうだい）、そろそろ飽きてもいいかなあとは思うが、それでもしつこく執着してチケを取ってしまうのは、面白いからなんだよ、松尾さん！　万人向けじゃなくてもいいじゃないか、大衆の評価なんかいいじゃないか、いや、そりゃああったほうが絶対いいけど、小さくまとまってもいいじゃないか！

そして、宮藤さんのスタンスは、ほんとぉぉぉぉぉぉに、売れようが売れまいが変わらないのね。
宮藤さんの自意識って、いったいどこにあるのだろうか？　ここまで立場が変わったのに、舞台の上に出すものがまったく変わらない人というのも、珍しいのではないだろうか。普通はもうちっと、欲目を出すとか色気を出すとか、大衆に媚びるとかするもんだと思うんだけど。

考えすぎな松尾さん、考えることを知らない宮藤さん、な感じに見える。
まったく、個人的な印象だけど。

そんでもって、その二人の作品の橋渡しをするのが、またまた濃ゆい井口作品。
一番こだわったのは、宮藤さんと皆川さんの生卵口移しだとインタビューで言っていたが、本当にあのシーンは強烈で、悪夢のように未だに頭から離れません。うぇぇぇぇ。
往年の大人計画に一番近いのが、井口作品というのも、何かを象徴しているようで、ものすごく面白い企画だった、ドブの輝き。