| ■ 小 説 ■ |
シライサン／乙一 乙一が別名で撮った映画のノベライズ。その噂を聞いた人間は、呪われて死ぬ。伝播系ホラーの王道。シライサンの謎、そして、無自覚な呪いの果てが怖い。歌舞伎座の怪紳士／近藤史恵 パワハラで引きこもりになってしまった主人公は歌舞伎と出会うことから、世界が広がる。観劇好きの自分としては、涙なしでは読めない一冊。舞台はいい、うん、舞台はいいぞ。逆ソクラテス／伊坂幸太郎 小学生を主役にした短編集。それぞれ独立した話が、最後でまとまるのが、いい。家電屋の店員よ、がんばれ。 |
| ■ ノンフィクション ■ |
死の海／後藤宏行 戦没者に海で足を引っ張られるという都市伝説を検証していった本作。都市伝説がなぜ生まれるか、生まれる背景を丹念に取材し、否定することなく事実だけを提示する。スリリングな面白さ。黄金州の殺人鬼／ミシェル・マクナマラ 1970年代米国の未解決連続殺人強盗強姦事件。その事件に魅入られてしまった作家は、一つ一つの事件を丹念に追い始める。やがて、30年たってDNA検査が一般的になってきた時、作家は犯人確定に動き始める。残念にも本書執筆途中で死去してしまった作家、残された家族がまとめて出版した一冊。つけびの村／高橋ユキ 田舎の偏狭さが事件を誘発したのか。報道されない事件の裏側を、村人たちへのインタビューから掘り起こしていく。確定ではない、そうかもしれないの、薄気味悪さ。 |
| ■ コ ラ ム ■ |
ロス猫日記／北大路公子 北大路先生は日々の楽しみです。エア猫や猫に近いモノと暮らしてみる日々の記録。猫はいい。天国にいる猫も、部屋にいる猫も。すべての猫はいい。夫が倒れた！献身プレイが始まった／野田敦子 植物状態になってしまった夫との介護の日々。家族という言葉で、献身という言葉で、どこまで繋がっていけばいいのか。安楽死法が早くできればいいと思う。倒れるときは前のめり ふたたび／有川ひろ 相変わらず、猪突猛進な有川さん。自分の信じた道を壁を破壊しながら進んでいく。傷つくことも多い生き方にただただ脱帽。見守っていきたいです。 |