| ■ 小 説 ■ |
片目の猿 道尾秀介 叙述トリックというのは、小説でしか通用しない手法だと思う。デビュー作からずっと叙述トリックにこだわり続けている著者による、傑作。今までよりもポップでシャープな世界観は、読書初心者でもとっつきやすいはず。海の底 有川浩 有川浩を発見したのは今年の収穫。図書館シリーズも面白いけど、自衛隊三部作の中では一番面白い本書を。キャラは類型的でストーリーは独創的という、変わった作家。来年はますますブレイクの予感。新釈走れメロス 他四編 森見登美彦 「夜は短し〜」も面白かったけど、はちゃめちゃ的切なさでこちらに軍配。著者言うところの「腐れ大学生」たちの破天荒な日々を描いた奇想小説。絶対オススメ。 |
| ■ ノンフィクション ■ |
生きさせろ！ 雨宮処凛 生き辛さ系を取材してきた著者がたどりついた一つの結論。それは労働問題。生き辛い系の問題の本質の一つに、金がない働くところがない生きていけないというのがある。自分のために闘え。怒りを知れ！ 他人事ではないので、真剣に読んでしまった。累犯障害者 山本譲司 これまでに一番居心地がよかったのは、刑務所だったという障害者犯罪者の一言に衝撃を受け、取材を開始した著者が見たのは、想像を絶した現実だった。福祉の外にこぼれ落ちていく人たち。福祉の限界とは何か、いろいろと考えさせられる本。帰還せず 青沼陽一郎 太平洋戦争終結後、それぞれの理由から日本に帰国しない兵士たちがいた。彼らはそのまま南国へと根をおろしていく。遠い故郷となった日本を、彼らはどう見ているのか。渾身のノンフィクション。 |
| ■ コ ラ ム ■ |
毎日かあさん〜出戻り編 西原理恵子 今年はこれを1位にするしかない。最後の半年は本当にシアワセだったというサイバラ先生に涙。ケータイ小説を読むなら、これを読め！あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します 菅野彰×立花美枝子 これはすごい。ある意味、廃墟探訪よりもすごいと思う、死にかけている料理店探訪記。体を張った取材にはもはや脱帽するしかない。シュミじゃないんだ 三浦しをん もはやすっかり市民権を得たとはいえ、他人に言うのはちょっと恥ずかしい趣味でもある、ＢＬ。しかし、三浦しをんならば、渋谷駅前交差点の真ん中でも高らかに叫ぶだろう。愛に圧倒される、ＢＬ紹介コラム本。 |